さらに synthesize について-ケンブリッジ大学出版とオックスフォード大学出版の英語教材から-

 2020年用のケンブリッジ大学出版とオックスフォード大学出版の英語教材の内容がどのようなものであるかを見ていて気づいたことがありました。それは、両出版のアカデミック用の教材には、synthesize (統合する)が学習項目として取り上げられていたことです。具体的には、ケンブリッジ大学出版では Unlock Second edition Reading, Writing & Critical thinking であり、オックスフォード大学出版では Q: Skills for Success Listening & Writing 3rd Edition です。

 

 両書とも6冊で構成されていて、英語学習者の入門から上級までの6レベルをカバーしています。 CEFR(外国語の学習、教授、評価のためのヨーロッパ共通参照枠)での Pre A1 から C1 まで(英検で言えば5級から1級)がそれぞれの冊子で学習できるようにできています。両書の共通点は、英語学習に加え、批判的思考力(Critical thinking skills) を高めることを目指していることです。

 

 ここでの具体的な批判的思考力とは、近年、日本でのよく耳にするブルームの分類法(Bloom's Taxonomy)の改訂版のものです。それには、低次思考力(lower-order thinking skills:LOTS)として扱われる①記憶する(Remember) ②理解する(Understand) ➂応用する(Apply) に対し、高次思考力(higher-order thinking skills:HOTS)としては、④分析する(Analyze) ⑤評価する(Evaluate) ⑥創造する(Create) が提示されています。このように分類された思考力(thinking skills) のどれを教材のTask(学習活動)に用いるかが、具体的に示されています。

 

 両大学出版の新版(ケンブリッジ大学出版はSecond edition、オックスフォード大学出版はThird Edition)とその前のものと比較して気が付いたことが、Synthesize(統合する)の項目がより明確に取り入れられていることです。ケンブリッジ大学出版の Unlock では、どのレベルであれ、Map of the book(本の地図)にそれぞれのレッスンの学習目標が具体的に書かれているページがあり、そこには全レッスンの Reading 学習において Synthesizing(統合する)の項目が設けられています。その学習活動は、各レッスンの2つの英文に書かれている考えを活用しながら、質問に答える活動となっています。その前の版での Map of the book では、Synthesizing の項目はありません。 Making inferences from the text(文章から推論する)でとどまっています。Unlock Second edition では、Making inferences (推論する)に留まらず、さらに Synthesizing を加え、さらに高い思考力の育成を目指しているのようです。

 

 同様にオックスフォード大学出版の Q: Skills for Success Reading and Writing 3rd Edition においても、教材カタログ(OXFORD 2020 ELT Catalogue)には、「ブルームの分類法に基づいた批判的思考の方略を活かして練習する」(p.41)とあります。そこで具体的に示されている ライティング活動(Write what you think)は、2つの質問に対して、SYNTHESIZE  Think about Reading 1, Reading 2 and the unit video as you discuss these questions.  Then choose one question and write a paragraph in response.「統合する:これらの質問で話し合った時の英文1、英文2、そして単元のビデオについて考えなさい。それから、下の質問から一つ選び、その返事のパラグラフを一つ書きなさい。」(拙訳)という  synthesize(統合する)を意識した活動・練習になっています。

 

 改訂版のブルームの分類法では create に取って代われた synthesize が、両大学出版の新しい教材では、意図的なかたちで取り入れられているのは、非常に興味深いです。これを機に、文科省認定の英語教科書に synthesize を意識した活動・練習を取り入れたものがあるのかを知りたいと思いました。既存の教科書や新学習指導要領に基づいた教科書にそのようなものがあるかを調べてみたいです。