synthesis / synthesize あれこれ-この一週間で目にした雑誌や本から-

 前回のブログでは、創造する(create)ことが「統合する」(synthesize)ことでもあるという意見を紹介しました。synthesize や synthesis (統合)という言葉を、この一週間で連続して目にしたので、紹介します。

 

① 週刊ダイヤモンド 2019/09/28 p.49 より

 

  p.49 は、特集記事「ビジネスフレームワーク集」の中で「創造的思考」をテーマにして書かれているページで、「デザイン思考」を紹介しています。日本でも慶応義塾大学などが早くから取り入れ研究・教育を行っている、世界で注目されている創造思考法です。IDEOという米国のデザインコンサルコンサルティング会社がデザイン思考をつくり出し、広めました。記事では、デザイン思考のアプローチとして4つのポイントを循環する過程が紹介されています。それは、

 

 Inspiration (着想)⇒ Synthesis(統合)⇒ Ideation & Experimentation(アイデア創造と実験)⇒ Implementation(実現)⇒ さらに Inspiration .... が続く

 

としています。「Synthesis(統合):着想した内容にパターンやテーマといった意味付けを行い、仮説を統合する」との説明がされています。

 

 企業の創造性を高めるために用いられている「デザイン思考」において、synthesis の言葉が用いられている点に興味深いです。

 

  p.57 においても「デザイン思考のプロセスのイメージ図」で

 

  Scope(視野・領域)⇒ 360°Research(360度評価)⇒ Synthesize(総合・統合)

  ⇒ Ideate(アイデアを出す)⇒ Prototype (プロトタイプ)⇒ Validate(妥当性を確認)

  ⇒ Implement(実行)⇒ Test(テスト)⇒ Deploy(展開・配備)

  

  を「行きつ戻りつしながら繰り返す」としています。

 

 

② 『教え学ぶ技術-問いをいかに編集するのかー』(苅谷剛彦/石澤麻子著)

 

 今月発売された、ちくま新書の一冊です。オックスフォード大学はチュートリアルと呼ばれる少人数制(1~3名)の徹底した個別指導を、同教授である苅谷氏が、同大学院の修了生である石澤氏に対して日本語で再現したものです。チュートリアルで議論し小論文を書くのに「問いの立て方や展開」が大切で、その問いに焦点を当てた本ですが、そのチュートリアルが目指すところが「個々のコミュニケーションと批判の能力(統合・分析・表現)を発展されることにある」(p.26)です。その箇所は、オックスフォード大学の教員たちが書いた本 The Oxford Tutorial: 'Thanks, you taught me how to think  から引用し、日本語に訳されるているものです。「統合」という言葉が使われているので、原書ではどの単語を使われているかを調べました。その箇所は以下の通りです。

 

'Higher education, in whatever subject, is the development of the inddividual's communication and critical facilities (synthesis/ analysis/ expression) ...' (p.10)

 

 大学教育以降にあたる高等教育(higher education) で身につける能力に「統合」(synthesis)が挙げられていることは、教育ある英語話者にとって「統合」(synthesis) という単語は、知的能力を示す抽象概念であるように思われます。

 

Talking to Strangers: What we should know about the people we don't know の評価より

 

 Malcolm Galdwell 氏の最新刊(ハードカバー)の裏表紙にある Praise for Malcolm Galdwell (マルコム・グラッドウエル氏に対する称賛)で Washington Post の Heller McAlpin氏は次のように称賛しています。

 

'Galdwell is a master of synthesis."

「グラッドウエル氏は統合することに関しての達人である。」(拙訳)

 

 ベストセラー作家であり、TIme誌において最も影響力のある100人にも選ばれたことがある、グラッドウエル氏を a master of synthesis と称しているのは、synthesis がいかに重要な語であるかを示しているようです。

 

*神戸大学(2014年)の英語問題の一つは、グラッドウエル氏の Outliner からのものです。


(参考文献)

週刊ダイヤモンド 2019/09/28 号 特集『ビジネスフレームワーク集』 ダイアモンド社

 

苅谷剛彦/石澤麻子(2019)『教え学ぶ技術ー問いをいかに編集するのか』筑摩書房

David Palfreyman edit (2008).  The Oxford Tutorial: 'Thank, you taught me how to think'  Blackwell's

Malcolm Galdwell (2019).   Talking to Strangers: What we should know about the people we don't know  LITTLE BROWN