「脳の可塑性」と「リーダー論」-『ニューズウィーク日本版』より-

 先月発行の『ニューズウィーク日本版』(2019年6月18号)の特集は「世界のエリートが学ぶ至高のリーダー論」でした。「全米最高の教授」の一人とされる、ジョージタウン大学のサム・ポトリッキオ教授が説くリーダー論が紹介されています。様々なリーダーのタイプがありますが、同教授は「カリスマリーダー」への道を説いています。ここでの「カリスマ」の意味は、「突出する」こと、聖別され祝福されることです(p.24)。

 

 「カリスマリーダー」の候補になるための8つの目標を掲げています(p.24-p.25)。例えば、「毎週、最低3冊の本を読むことを努力すること」「旅行先として躊躇しがちな場所を1年に2か所訪問すること」「6人のメンター(頼れる助言者)を持つこと」などです。これらの目標から「読書・旅・人」というキーワードが見えてきます。

 

 8つの目標を追求することで、カリスマリーダーに近づくものとされています。何故なら、人間の脳が持つ弱点(p.27)、-注意散漫さ、偏狭な世界観、自信過剰、脳の「さぼり癖」-を克服することになるからです。

 

 これらの弱点を克服できるのは、「脳の可塑性」のためです(p.27)。「脳の可塑性」が意味するのは、脳のプログラミングを努力によって変えることができることです。すなわち、カリスマリーダーは、脳のプログラミングを変えた人のことです。

 

 私がこのリーダー論が興味深いと思ったのは、「脳の可塑性」(英語はneuroplasticity、はの簡単に 'plastic brain' と言っています )を前提に据え、人の脳が持つ弱点を、努力によって脳のプログラミングを変えることによって克服した人が、カリスマリーダーとなるということです。

 

 私が知るリーダー論は、将来ビジョンに基づくものであったり、共感的なストーリーを共有することであったりするものでした。今回のリーダー論は「脳の可塑性」を前提とするものです。

 

 この可塑性は、脳の神経損傷の回復についての研究においても注目されています。今後の能力(脳力)開発における根拠となり、多様な理論が生み出されるものと思われます。

 

(注)最後の3段落の要点をまとめた感想文を投稿したところ、今週発売の 2019年7月30日号の『ニューズウィーク日本版』の Letters 欄で掲載されました。


(参考文献)

『ニューズウィーク日本版』(2019年6月18日号)「世界のエリートが学ぶ至高のりーだー論」  cccメディアハウス

『ニューズウィーク日本版』(2019年7月30日号)「Letters」  cccメディアハウス