「仕事を求める人」「仕事を創りだす人」-job seekers or job creators-

 表題にある job creators (仕事を創りだす人)は、Muhanmmad Yunus 氏が自身の著書 A world of three zeros で書かれている言葉です。Yunus氏は、Grameen Bank を創設し、貧困で苦しんでいる人達に対して小口融資をすることで自立を援助し、その達成に大きく貢献したことで、2006年にはノーベル平和賞を授与されています。同書の3つのゼロ(three zeros)とは、貧困、失業、炭素排出量をゼロにすることです。そのためには、今まで当然とされてきた考えを変えることが必要であると説き、その一つが「人は生来、起業家(企業家)として生まれ、創造的能力を持ち合わせている」です。

 

"we need to replace the assumption that nearly all people are born to spend their lives working for other people with the new assumption that all people are born entrepreneurs, packed with unlimited creative capabilities." (p.31)

「我々は、ほとんど全ての人は自らの人生を他人のために働いて過ごすために生まれるという前提を変える必要がある。それに代わる新しい前提とは、全ての人は起業家として生まれ、無限の創造力を有している、というものである。」(拙訳)

 

 これらの前提から、若者の人生においての二つの選択肢を同氏は提示しています。

 

"two choices throughout their lives: they can be job seekers or job creators - entrepreneurs in their own right rather than relying on the favor of a job from other entrepreneurs" (p.70)

「彼ら(注:若者)の人生を通しての二つの選択肢、すなわち、仕事を求める人になるのか、それとも、仕事を生みだす人になるのか、である。後者は、他の起業家からの仕事の提供の好意に頼るよりも、自らが気起業家たるものとする。」(拙訳)

 

 生まれながらしてに人は、無限の創造力を持つ起業家であり、それが故、仕事を生みだす人となる得る、という主張は、日本社会においても有益です。少なくとも、仕事を求める以外に、自らが仕事を創りだすという選択肢があることを意識することは、来たるべき社会である、ソサエティ5.0 において必要であり、一人でも多くの人がこのような考えを持つことが社会を変える切っ掛けになると思われます。

 

 Great by Choice という本に、マネジメントの泰斗である、故Peter Drucker 氏の言葉が紹介されていました。今回の内容と関わるので、以下に引用します。

 

"As the influential management thinker Peter Drucker taught, the best - perhaps even the only - way to predict the future is to create it." (p.12)

「非常に影響を与えてきたマネジメントの思想家である、ピーター・ドラッカー氏が教えたように、未来を予測するのに、最善、おそらく唯一の方法は、未来を創造することである。」(拙訳)

 

 未来を創造することが、未来の予想法であるとするならは、仕事を創造することも、未来を予想する方法であると言えるでしょう。


(参考文献)

Jim Collins and Morten. T. Hansen (2011).  GREAT BY CHOICE  Harper-Collins Publisher

Muhammad Yunus (2017).  A World of Three Zeros: the new economics of zero poverty, zero unemployment, and zero net carbon emissions  PubicAffairs