スキル(Skills)論(その10)-『社会情動的スキル』より「SAFEの原則」-

 前回のブログで紹介した『社会情動的スキル』にスキルを培う方法として、「SAFEの原則」がスキルの訓練プログラムとして最も効果的である(p.222)と述べています。

 

 「SAFE」とは、Sequenced, Active, Focused, Explicit の頭文字を取ったものです。「SAFEの原則」とは、「順序たてた(Sequenced)トレーニングや積極的な(Active)学習方法、スキル育成タスクに時間と注意を向けている(Focused)ことと明確な(Explicit)学習目標を組み込むこと(p.222)である。

 

 私がこの言葉に注目したのは、以前より focused や attention(注意力) が学習の成果を生む上で、最重要な言葉であると考えていたからです。 focused, sustained attention(FSA)「一点に集中し、長時間続く注意力」が「深い学び」をもたらすものであるとことをブログ (2018年6月24日)で書きました。アクティブ・ラーニング(Active Learning)を行うことにおいて、Focused, Sustained Attention を外すことはできません。Active と Focused の向け先が、明確な(Explicit)学習目標であり、その学習目標を達成するための順序立て(Sequenced)です。

 

 このように、

 

① Explicit (明確な)

② Sequenced (順序だった)

学習目標と学習方法で

➂ Active (積極的な)

④ Focused (集中した)

 

の状態で学習を行うと、学習目標を達成するだけでなく、(認知的・非認知的の両方の)スキルを培うことになります。

 

 身についたスキルが次のスキルを身につけることに役立ちます。これは「スキルがスキルを生む」(Skills beget skills)と表現されています。私はヘックマン教授の本 Giving kids a fair chance でこの表現を知ったのですが、『社会情動的スキル』においても、何度も使用され、スキルを得るための重要な表現であり考え方になっています。「スキルの発達は、雪玉を作ることに似ている」(p.104)ことから、雪玉がどんどん大きくなるように、生涯に渡ってスキルもどんどん大きくなるようなイメージで説明されています。

 

 つまり、認知的スキル及び非認知的(社会情動的)スキルを身につけるには、「SAFEの原則」で学習を行うことが効果的であるということです。

 


(参考文献)

経済協力開発機構(OECD)[編著]ベネッセ教育総合研究所[企画・製作]武藤隆/秋田喜代美[監訳]荒巻美佐子/都村聞人/木村治生/高岡純子/真田美恵子/持田聖子[訳](2018)『社会情動的スキル:学びに向かう力』 明石書店