「コミュニケーション力」の定義-"On Dialogue" より-

 コミュニケーション力が大切であるのは、誰もが認めることであると思います。私は、英語授業の目標として、英語でのコミュニケーション力の育成を掲げています。日英の辞書では「意思伝達」などの訳がありますが、生徒にはそれでは少しわかりにくいようです。それ故、私は、コミュニケーション力を「相手が伝えたい内容を正確に理解し、相手に自分が伝えたいことを正確に理解させる能力」であると定義して伝えていました。英語でのコミュニケーションは、英会話であると誤解している生徒がいるので、この定義により、コミュニケーションは、会話だけでなく、書くことやジェスチャーの行為も含むことを生徒に理解してもらいためです。

 

 拙論『反転授業:アクティブ・ラーニング実現は「問い学ぶ」教育に道(よ)る』(大学英語教育学会(JACET)関西紀要 第19号)で、この定義を使用しました。その後、「対話的な学び」をよりよく理解しようと思い David Bohn著 On Dialogue を読んでいる際に、communicate を以下のように定義して、私の定義より優れていると思いました。

 

'One meaning of "to communicate" is to "make something common," i.e., to convey information or knowledge from one person to another in as accurate a way as possible.' (p.2)

「『コミュニケートする』の一つの意味は『共通のものを作ること』である、つまり、ある人から別の人へ情報や知識を出来る限り正確に伝えることである。」(拙訳)

 

 私の定義との違いは「出来る限り」(as ~ as possible)の部分です。考えてみると、常に100%正確に伝えることはあり得ません。なので、100%、すなわち、完璧に伝えることを少しでも近づけるように努力することが必要であることが「出来る限り」という言葉から理解できます。そのことを理解してから、私は「相手が伝えたい内容を出来る限り正確に理解し、相手に自分が伝えたいことを出来る限り正確に理解させる能力」とコミュニケーション力の定義を修正して、生徒に伝えています。


(参考文献)

David Bohn(1996). On Dialogue  Routlesge