洋書 "New Power"での「教育」の位置付け

 阪急梅田にある紀伊国屋書店では、新年2日から4日までは、洋書を2割引きで買えるバーゲンセールでした。2割引きのお得感があり、洋書を4冊購入しました。そのうちの1冊が New Power でした。この翻訳本が先月発売され、書店入口にはこの本の販売コーナーが設置されているため、書名は知っていましたが、原書を見るまで購入しようとは思いませんでした。しかし、原書のカバーに BUSINESS BOOK OF THE YEAR 2018 SHORTLISTED とあったので、注目されている本であると思い購入しました。

 

  BUSINESS BOOK OF THE YEAR 2018 SHORTLISTED とは、マッキンゼーとファイナンシャル・タイムズ社が毎年選ぶビジネス本大賞の最終候補に挙げらている本です。大賞を受賞した本や最終候補の本を何冊も読んできて、何れも面白かったので、今回も購入した次第です。

 

 本のタイトルである New Power は、Old Power との対比で書かれています。それぞれの価値観とビジネスモデルを組み合わせて提示されている The New Power Compass は、多様な視点を提供し、新たな知見を与えくれます。同書では、4象限のマトリックス図表(p. 28, p. 163)で示されていますが、ここでは、2つの象限(第1章現と第3象限)を紹介します。

 

 New Power の価値観とビジネスモデルを体現している(第1象限)のが、Wikipedia や Airbnb などです(p.28)。その価値観とは、collaboration(協働)、sharing(シェアリング・共有)、radical tranparency(徹底した透明性)などです。そのビジネスモデルの特徴としては、decentralized(権力の分散化)、lacking an organizational owner or traditional leader(組織の所有者あるいは伝統的なリーダーの欠如)が挙げられます。

 

 その対極としては、Old Power の価値観とビジネスモデルを体現しているもの(第3象限)です。価値観とは、formal governance, managerialism, institutionalism(形式的な統治主義、経営主義、制度主義)、competition(競争)、confidentiality(秘密性)などです。ビジネスモデルは、traditional hierarchical and authority-based model(伝統的なヒエラルキーで権威をベースにしたモデル)です。その例として Apple社やNobel Prize committees(ノーベル賞委員会)が挙げられています(p.28)。興味深いのは、このカテゴリーに入るのが、軍隊とともに「教育」education とされています(p.163)。

 

 ソサエティ5.0の教育のビジョンを描く際に、Old Power ではなく、New Power での価値観や実行モデルを体現した「教育や教育機関」を考えていくことで、新しい教育の姿が見えてくるかもしれません。


(参考文献)

Henry Timms & Jeremy Heimans(2018).  New Power: How it's changing the 21st century- and why you need to know  Macmmillian