「知識・スキル」「問い学ぶ態度・価値観」と Why How What

 前回のブログでは、「価値観」が「問い学ぶ態度」を導き、「問い学ぶ態度」によって「知識・スキル」を求め、得るという過程を説明しました。「知識・スキル、態度、価値観」の言い換えとしての「資質・能力」や「コンピテンシー」(Competency)を考える際、「価値観」について明確にすることが不可欠になります。しかし、今回の学習指導要領改訂の方向性の画像を見る限り、このことについては記載されていません(http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpab201701/detail/1398192.htm)。

 

 学習指導要領改訂の方向性の画像では、「何をできるようになるか」「何を学ぶか」「どのように学ぶか」の三本柱になっています。その上の画像(「知識・スキル」「問い学ぶ態度・価値観」とWhy How What)で言えば、「何を学ぶのか?」(What do we learn?) と「どのように学ぶのか?」(How do we learn?) に相当します。「なぜ学ぶのか?」(Why do we learn?) に相当する部分が、学習指導要領改訂の方向性では見受けられません。

 

 おそらく、その画像でトップに位置する「何をできるようになるか」の資質・能力で「学びに向かう力、人間性等の涵養」が「なぜ学ぶのか?」に関わる部分だと推測されます。「学びに向かう力、人間性等」と言う場合、「学び」に関する「有用性」「重要性」「満足性」の考えや振る舞いが関わります。この3つの考えや振る舞いを、前回のブログで私は「価値観」と定義しました。

 

 学びについて「いかに役立つか?」「いかに大切であるか?」「いかに(自分に)満足与えるものであるか?」の問いの答えを分かることが、「なぜ学ぶのか?」の理解につながるものと考えます。それ故、冒頭の画像で「価値観」の部分を「なぜ学ぶのか?」にしています。

 学びの価値が分かれば、学びに向かう態度に現れます。この部分が、学習指導要領改訂での「学びに向かう力、人間性等」です。「人間性等」と書かれているので、等は「態度」を含むを理解できます。このように、学びに向かわせるのには、「なぜ学ぶのか?」という「学びに関する価値観」の形成が必要になります。

 

 数年前に日本でも話題になった、Simon Sinek氏の Start With Why (邦訳は『Whyから始めよう』)は、成功を収めている企業について述べた本ですが、教育にも通じると思います。同書では、偉大にリーダーを次のように述べています。

 

'Great leaders are able to inspire people to act.  Those who are able to inspire give people a sense of purpose or belonging that has little to do with any external incentive or benefit to be gained.' (p.6)

「偉大なリーダーとは人を鼓舞し行動させることができる人である。人を鼓舞できるできる人は、目的意識や帰属意識を与える人である。それらの意識は、外発的な刺激(動機)や損得勘定とは関係のない。」(拙訳)

`great leaders undersand the value in the things we cannot see.' (p.15)

「偉大なリーダーは、我々が見ることが出来ないものの価値を理解している。」(拙訳)

 

 2文から「物事の価値を理解し、目的意識を与え、人を行動させる」という特質を知ることが出来ます。これらは、Why と関係します。Sinek氏は、Why How What の関係を以下の図で表しています。

(https://en.wikipedia.org/wiki/Simon_Sinek)

 上の図は、同書の The Golden Circle「ゴールデン・サークル」として、p.37以降に登場し、

 

'The Golden Circle shows how these leaders were able to inspire action instead of manipulating people to act.' (p.38)

ゴールデン・サークルは、いかにして、リーダーが人々を操るのではなく、鼓舞し行動させることが出来たのかを示すものである。」(拙訳)

 

と説明し、キング牧師やケネディ大統領が、リーダーとして行動した理由を述べています。

 

 「ゴールデン・サークル」の Why How What は、問学教育研究部が作成した、2枚の図表と呼応します。教育を行う上で、Why の視点を外すことは出来ないことが分かります。


(参考文献)Simon Sinek (2011).  Start With Why: How great leaders inspire everyone to take action  PORTFOLIO PENGUIN