高齢者のチカラ(その2)-wisdom-

 Wisdom at work: The Making of a Modern Elder を読んでいると、synthesize (統合する)という単語が出てきました。この本は、これからの時代の高齢者の役割について述べています。アメリカでは、若手を中心としたIT企業が多く台頭し、高齢者の出番がなくっているように見受けられます。しかし、著者は50歳を過ぎてからシェアリング・エコノミーの代表格である Airbnb で若いCEOを助け、ホスピタリティを強化し顧客サービスの向上に貢献されました。前職では、boutique hotel (独創的で店舗ごとに異なるコンセプトと高いクリエイティビィテイをセールスポイントに持ち、10室から100室ほどの客室を有するホテルを指す。weblio英和和英辞典より)ではアメリカ第2位のブランドもった会社のCEOをされていました。

 

 年を取っても、その分だけ若者にはない「智恵」(wisdom)を獲得しているので、若者とタッグを組むことで会社は発展することができると述べています。その智恵とは、

 

1.良い判断(good judgment)

2.するどい洞察力(unvarnished insight)

3.高い「こころの知能指数」(emotional intellgence)

4.全体を見渡す思考力(Holistic thinking)

5.執事的精神(stewardship)

 

の5点です。この中で、興味深いのは4番目です。

 

'The ability to connect the dots, to synthesize and get the gist of something grows into late adulthood.' (pp.17-18)

「点と点をつなぎ、統合し、要点をつかむ能力は、中年以降の時期に育まれる。」(拙訳)

 

 ここでも、synthesize(統合する)が使われています。以前に紹介しました Diamond教授が言う、'the power of synthetic interdisciplinary thinking (統合的で学際的に考えるチカラ)の synthetic(統合的)の動詞です。弁証法の「正」(thesis)、「反」(antithesis)、「合」(synthesis)からの動詞 synthesize であり、形容詞 synthetic です。同書の別の頁には、

 

'Older people, with the advantage of years of experiences, have a vast storehouse of solutions embeded in their maturing brains that allows them to synthesize more information and potentially offer more solutoins.' (p.9)

「年齢を重ねた人々というのは、長年に渡る経験という利点を生かし、成熟した脳内に膨大な量の解決法を貯蔵している。それにより、彼らはより多くの情報を統合し、より多くの解決法を提示する可能性が高くなる。」(拙訳)

 

とあります。年をとっても、情報や知識をより高度な段階に統合する(synthesize)能力を得ることができるのには、勇気づけれます。


(参考文献)

Chip Conley(2018). Wisdom at work: the making of a modern elder  PENGUIN