教育が教育を生む-Education begets education.-

  前回のブログでは、ヘックマン教授の本 Giving kids a fair chance に書かれている言葉である Skills begets skills. (スキルがスキルを生む)を紹介しました。ヘックマン教授のこの言葉をネット検索すると、同氏がこの言葉を含めた発言が見つかりました。

 

'Cognitive and character skills work together as dynamic complements; they are inseparable. Skills beget skills. More motivated children learn more. Those who are more informed usually make wiser decisions.'

(https://www.azquotes.com/quote/1142363 より)

「認知スキルと人格(非認知)スキルは、別々ではなく一緒に用いるものである。それも、流動的に補完し合いながら。スキルがスキルを生む。より高い動機を持つ子供はより多く学ぶ。より多く知る者は、たいていより賢明な決断を下すものである。」(拙訳)

 

 この発言では、スキルでも認知スキルと非認知スキルの両方についての言及がされています。原文では非認知を人格を意味する character を用いていますが、同じ意味です。一般的には、character(人格)、心理学的には personality traits (性格特性)、教育経済学的には non-cognitive skills (非認知スキル・能力)と使い分けられているようですが、ほぼ同じ意味を指します。これら以外の表現として、soft-skills も使用されています。

 

 ところで、ヘックマン教授の同書では、Education begets education. (教育が教育を生む)という表現もありました。その箇所を紹介します。

 

 "There is also evidence that education begets education, so as parents got more education, it affects their involvement in their children's learning. This potential benefit of adult education, even if incomplete, is unaccounted for in typical policy analysis."(pp. 49-50)

教育が教育を生むという証拠も存在する。親が教育を受けていれば受けているぼど、そのことが親が自分の子供の学習に関与することに影響を及ぼす。しかし、大人がどのくらい教育を受けているか、たとえその教育が不完全であったとしても、その潜在的な利点については、典型的な政策分析では説明されていない。」(拙訳)

 

 ここでは、親の教育が子供の教育に影響を与えているということが語れていますが、子供本人の教育も同じことが言えるかもしれません。子供が受ける教育が良いものであれば、子供はまた良い教育を受けたいと思うのではないでしょうか?「教育が教育を生む」は「良い教育が良い教育を生む」と言い換えてもよいかもしれません。良い教育とは、high quality learning experiences (高い質の学習体験)(p.33) を提供する教育であると思われます。


(参考文献)

James J. Heckman(2013).  Giving kids a fair chance: a strategy that works  MIT Press