注意力(attention)をコントロールする能力-自制心-

 学ぶ際に、focused, sustained attention(一点に集中した、長期間続く注意力)と transformative power of attention (注意力が持つ、人を変容させる力)の重要性について、前回のブログで述べました。さらに、attention (注意力)をコントールする能力が大切であることも、ウィリアムズ・ジェームズの言葉を引用して述べました。今回は、注意力をコントールする能力は「自制心」(self-control)のことで、それについて書くことにします。

 

 Walter Mischel氏らによって行われた有名な「マシュマロ実験」(Marshmallow Test)で、幼児からの自制心(self-control)の重要性が知られるようになりました(以下は、同氏による著書 The MarshmallowTest を基に述べます)。 「マシュマロ実験」とは、50年以上前にスタンフォード大学で5-6歳児に対して行われた実験のことです。それは、子どもにマシュマロを目の前に置いて、大人がいない間に食べずに我慢することができれば、もう一つ食べることができると告げ、果たして、我慢してのちに二つのマシュマロを食べるかどうかを観察するものでした。大人がいない時にマシュマロを食べるというのは、immdeiate gratification (即座に得られる満足感)を得ること意味し、一方、大人が戻って来るまで我慢するのは、 delayed gratification(即座ではなく後に得る満足感)を得ることを意味します。この実験では、後者を選ぶ子供は、自制心があるとされ、前者はそうでないとされます。(p.13 - p. 20)

 

 この実験の凄いところは、被験者となった子供たちが、それからどのような人生を送っているのかを追跡調査していることです。例えば、10数年後の高校生になった時には、マシュマロを我慢した子供たちの方がそうでない子供たちに比べ、概して、大学入学に必要とされるSATの学科試験の成績が良かったなどの状況が明らかになりました。それは、実験の際の delayed gratification(即座ではなく後に得る満足感)で示された「自制心」が大いに関係するとされました。(p. 24)

 

 さらに、その子供たちが成人になってからも、追跡調査を行われ、実験で自制心を用いた子供たちは、概して、そうでない者と比べ、誘惑に負けず、集中力があり、知能は高く、自信を持ち、自らの判断に信頼を置き、さらに、人間関係において良好な関係を築き、例え、問題が生じてもうまく対応している、ということが判明しました。(p. 23- p.25)

 

 上記に、集中力があるとされていますが、それは、集中しようとする時に、「注意をそらさないでいることができる」という意味です。英語では、'less distractible when trying to concentrate' (p.23)です。注意をそらさないでいるということは、逆に言えば、注意力を保つ(sustained attention)ということです。それも、一点に注意力を定めて(focused attention)、ということです。ここから、「自制心」(self-control)は、focused, sustained attention を可能にするのものであり、ウイリアムズ・ジェイムズが言う、注意力をコントール能力であるとことが分かります。

 

 それでは、自制心はどのようにして育むのかが、問題となります。子供の頃に得た自制心が、生涯、同じであるのでれば、何も出来なくなります。それに関して、Mischel氏は、デカルトの言葉である、'I think, therefore I am.' (我思う、故に我あり)と引用し、それを 'I think, therefore I can change what I am.' (我思う、故に現在の自分を変えることができる)と言い換え、考え方を変えることによって、私たちは感じたり、行動したりすること変え、現在の自分をも変えることができると言います。さらに、'But can I really change?' (しかし、本当に私は変わることができるのか?)という懸念に対しては、セラピストがクライアントに同じ質問されて答えるように、次のように、答えるそうです。それは、その質問者の目をしっかり見て、'Would you like to?' (あなたはそうしたいのですか?)と。(p. 278 - p. 279)

 

 これを述べる根拠に、脳の可塑性(plasiticity, melleablity)を指摘しています。(p. 273 - p.274; p. 278) この言葉から、自制心も筋肉を同じように、鍛えることができることが分かります。Mischel氏は、acquirable skill(獲得できるスキル・能力)であると述べています。(p. 3)


(参考文献)

Walter Mischel (2014).  The marshmallow Test: Matering Self-Control  Little Brown