深い創造性と浅い創造性

 「深い~」vs「浅い~」は、学びや思考だけでなく、創造性にも当てはまります。William Duggan 氏の著書 The seventh sense では、deep creativity(深い創造性)と shallow creativity(浅い創造性)について書かれています。すなわち、深い創造性は、the seventh sense 「第7感」により生まれ、浅い創造性は the sixth sense「第6感」から生まれるのであるということです。

 

 「第7感」は聞きなれない言葉です。著者の Duggan氏の造語のようです。「第7感」は a flash of insight (洞察的ひらめき)であると述べています。一方、良く知られている「第6感」とは、直感を意味します。同氏は、「第6感」を Daniel Kahneman氏のベストセラーである Thinking fast and slow の Thinking fast (速く考える)に当たるものとしています。何かの問題に「直感的に」(第6感的に)速く考え答えを出すのは、慣れ親しんだ状況においてはうまく行くが、目新しい状況では、間違いを起こす可能性が高くなります。このような直感の「第6感」に対し、「第7感」は目新しい状況や分野において「洞察的ひらめき」はうまく行く、と述べています。

 

 A flash of insight(洞察的ひらめき)は、The Eureka moment(「発見した(ピンときた)瞬間◆研究や調査、探しものなど」英辞郎 on the web )、 A spark of genius(天才のひらめき)、The Big 'Aha!' (わかった!)、An epiphany(突然のひらめき)とも呼ばれています。歴史にのこるような発見や大企業になるに至った「ひらめき」(同書ではスターバックス社の例が紹介されています)は、これらのひらめきによるものです。

 

 A flash of insight(洞察的ひらめき)は、insight(洞察力)という言葉が示すように、物事の本質をつかむことです。このような洞察的ひらめきを得るには、Duggan氏によると、①Examples from history(自他の歴史や過去の事例を参照する力) ②Presence of mind(心の制限をしない状態で、今の瞬間に「心」がある状態) ③Resolution (決意)を伴います。決して短時間で得ることができるものではありません。

 

 「第7感」による生まれる「洞察的ひらめき」は、「深い創造性」となります。同書では、この創造性は時間制限のある心理実験で発見されるものなく、それは「浅い創造性」であると述べています。会議などで用いられるブレーンストーミングにおいても、その創造性は「浅い」ものあると指摘されています。このことは、アクティブラーニングにおいても参考になる視点です。「深い創造性」は実は、ブレーンストーミングやアクティブラーニングで行われる場所の外で生まれるである-このことを理解することは重要です。

 

 前回のブログで「深い学び」と「浅い学び」の違いをもたらすのは、focused, sustained attention(長い集中力)であると述べました。「深い創造性」において、sustained attention (長時間や長期に渡って注意を向けること)は不可欠であり、さらに focused (集中した) だけでなく unfocused (集中を外した)attention(注意力) を使い、Presence of mind と Examples from history を用いると、「洞察的ひらめき」や「深い創造性」が得られるのでないかと、考えています。

 

 さらに、「洞察的ひらめき」を得る上で、問学が役に立つと考えます。何故なら、問学の目的に、「物事の本質を見極める力」(洞察力)を得ることがあるからです。


(参考文献)

William Duggan(2017). The Seventh Sense: How flashes of insight change your life. Columbia Business School Publishing