対話的な学び(その1)-interactive or dialogic?-

 学びに関しての「主体性」(proactivity)について様々な観点から私見を述べました。今回は、「対話的な学び」についての私の考えを書きます。文部科学省が言及する学びが「アクティブ・ラーニング」から「主体的・対話的で深い学び」に展開していますが、その真ん中に位置するものが「対話的な学び」です。

 

 文部科学省の英語版ホームページにアクセスすると、'Overview of the Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology' というタイトルのパンフレットのページ(http://www.mext.go.jp/en/about/pablication/index.htm)があります。 文部科学省の概要を英語で説明するデジタルパンフレットです。それを参照すると、文部科学省が「主体的・対話的で深い学び」をどのように表現しているかが分かります。その箇所を以下に引用します。

 

 "The National Curriculum Standards have been under deliberation by the Central Council for Education since November 2014. The council is discussing revisions to the National Curriculum Standards suitable for a new era with the aim of realizing a“ curriculum open to society.” In addition to identifying competencies that will be required in the future, the council works on implementing proactive, interactive, and deep learning improving classes from the perspective of active learning, reassessing subjects, and enhancing curriculum management as well as learning assessment."

「2014年11月より中央審議会により学習指導要領を審議してきました。審議会は「社会に開かれたカリキュラムを実現するため、新しい時代に適した学習指導要領の改訂を議論しています。将来必要とされるコンピテンシー(能力)を明確にすることに加え、審議会はアクティブ・ラーニングの視点から授業を向上させる主体的・対話的で深い学びを行うことに取り組んでいます。その取り組みは、学習評価のみならず、教科の再評価やカリキュラムマネジメントの向上に対する取り組みとともにあります。」(拙訳)

 

 文部科学省は、「主体的」を proacitve としています。これは、私が考える英語表現と同じです。「深い」は deep で異論がありません。しかし、「対話的」は interactive と表現されていて、私が考えていた英語表現とは異なります。

 

ジーニアス英和辞典では、interactive は

1. 相互作用を活用した、相互に影響し合う。

2.[コンピュータ]対話方式の」の二つの訳が載っています。

 

一方、英語の定義(Collins English Dictionary- complete and Unabridged, 12th Edition 2014)では、

1. (Computer Science) allowing or relating to continous two-way transfer of information between a user and the central point of a communication system, such as a computer or television 

「(コンピュータ科学)コンピュータやテレビなどのコミュニケーションシステムと使用者の間において双方の情報のやり取りが継続的に行われること」(拙訳)

2.(of two or more persons, forces, etc) acting upon or in close relation with each other, interacting

「(二人以上や二つ以上の力などが)互いに影響を与える、もしくは、近い関係にある」(拙訳)

 

 確かに日英の辞書では、「対話的」はあるのですが、interactive 「相互に影響を与える」の意味が書かれています。すなわち、interactive は、active に inter(相互の)を加えられた単語です。inter(相互の)+ national (国家の)= international(国際的な)と同じような語感です。

 

 「対話的な学び」interactive learning を「互いに影響を与える学び」とするならば、それはそれで理解できます。それならば、「互いに影響を与える学びとは何か?」という問いが生まれ、対話的な学びの具体的な内容を吟味することなります。

 

 平成28年(2016年)5月29日教育家庭部会高等学校部会資料8(会議後修正)の「主体的・対話的で深い学びの実現(「アクティブ・ラーニング」の視点からの 授業改善)について(イメージ)(案)によると、

 

【対話的な学び】 他者との協働や外界との相互作用を通じて、自らの考えを広げ深める、対話的な学びの過程が 実現できているかどうか。

 

【対話的な学び】 子供同士の協働、教師や地域の人との対話、先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ、自 らの考えを広げ深める「対話的な学び」が実現できているか。

 

以上の文言が書かれています。上段の【対話的な学び】に、赤字で示した「相互作用」が出てくるので、この意味で interactive を使用しているかもれません。しかし、下段の【対話的な学び】では、「相互作用」の印象はなくなります。ここでは、「対話」が現れ、対話的な学びに直結しているように思われます。

 

 それでは、「対話的」の英語は何か? となりますが、それは、dialogic です。私は、「対話的な学び」の英語は、dialogic learning だと考えています。次回は、それについて述べます。