主体的な学び(その8)-主体性の中身-

 「主体的な学び」について、英語の proactive, reactive, inactive の単語を用いて説明してきましたが、今回は「主体性」(proactivity)の中身について考えます。これまでの考察と同様、今回もさまざま本や文献を読み、考えることを通して、「搾りだした」考察です。今後もこの考察を更新することがあると思いますが、現段階での考えを述べます。

 

 Proactive の定義は、Oxford新英英辞典によると次の通りです。

 

“(of a person or action) creating or controlling a situation rather than responding to it after it has happened”

「(人や行動に関して)ある状況が起こった後に反応するよりも、その状況を創造したり、コントロールしたりする」(拙訳)

 

 Proactive を示す動詞は、create 「創造する」あるいは control 「コントロールする」です。「主体的な学び」において、control 「コントロール(する)」に私は注目しています。学習において、教師や外部の刺激により、学習を「やらされている」のではなく、自ら「する」際に、学ぶ内容をコントロール、言い換えれば、支配する感覚が必要がであると考えます。たとえ理解するのが難しい内容であったとしても、自分を卑下することなく、立ち向かう自尊心も不可欠です。

 

 その自尊心を持つ出発点が、ownership という「所有者であること」の実感です。学習において、学習対象を「自分のものにする」、あるいは、「している」という実感です。学習対象が、自分のものでなければ、それに対する気持ちや意識を十分に持つことが出来ないでしょう。「自分のものである、自分が所有している」という意識が、「当事者」意識にもつながります。

 

 学習対象や内容が、自分のものであると捉えることが出来ると、そこに 「責任」 responsibility が生まれます。学習に対して責任を持つことは、決して他人や環境のせいにするのではないということです。

 

 これらの3語、control 、ownership、responsiblity が、proactivity「主体性」に関わる要素であると考えます。これらの名詞は、次の慣用句で表現されます(英辞郎 on the web より)。

 

        * take contol of ~   「~を制御{せいぎょ}[統制{とうせい}・管理{かんり}

               監督{かんとく}・掌握{しょうあく}・指揮{しき}]する、

               ~の支配権{しはいけん}[主導権{しゅどうけん}

               経営権{けいえいけん}]を握る

 

         * take owership of ~  「~の所有{しょゆう}権を得る[者となる]、

                ~を自分{じぶん}のものにする

 

         * take responsibility for ~「~の責任{せきにん}を取る、~に責任{せきにん}を持つ

                 ~に関して責任{せきにん}を負う、~にけじめをつける

               ◆問題などが発生したときに、その責任が自分にあることを認め、

                対策を講じること。辞任または辞職の意味ではない。」

 

 

 以上の慣用句のどれもの動詞が、take 「取る」であることは注目に値します要するに、「主体性」とは、「何かを取ること」を示すことであって、決して「与えられること」ではなく、「所有権」owneship、「主導権」control、「責任」responsiblity を取ることです。そして、「主体的な学び」とは、学びに対して、所有権、主導権、責任を取ることであると考えます