主体的な学び(その1)-Proactive Learning-

 今回は、学習指導要領改訂において中心的な実施目標である「主体的な学び」について述べます。

 

 昨年の8月に文科省が学習指導要領改訂に関する発表を行いました。その中で、それまでは教育界でキーワードとして注目されていた「アクティブ・ラーニング」という言葉を前面に押し出すのではなく、その言葉をより嚙み砕いて「主体的・対話的で深い学び」が用いられました。その学びの実現が指導要領改訂後に求められます。

 

 「主体的」「対話的」「深い」の3つの形容詞を伴う「学び」が提示されたのですが、どれもが分かるようで分からない言葉であるように思えました。特に、この中で、私が自分の言葉で説明することが出来なかったのが、「主体的」です。実は、拙書「反転授業が変える教育の未来」の副題が「生徒の主体性を引き出す取り組み」となっています。著者ながら、その副題の意味が分からないのは、もう一人の著者(芝池反転授業研究会会長)が拙書の「おわりに」の締めくくりとして「反転授業が生徒の主体性を引き出す取り組みとなり、やがて生きる力につながることを願ってやみません。」と書き、それが私自身の言葉ではないからです。

 

 出版当時、「主体性とは何ですか?」と問われても、私は説明することは出来なかったのです(とは言っても、誰からも質問はされませんでしたが)。このことを問い続け、約半年後にふと考えが浮かびました。それは、上の画像が示す「主体的」という英語(proactive)です。

 

 当時は、「アクティブ・ラーニングは何であるか?」についても考えていました。「アクティブ・ラーニング」は海外から入ってきた言葉なので、英語も Active Learning となります。私は、active という言葉に注目しました。active に接頭辞を付けながら、その言葉の意味を考えました。一つは、inactive。in は否定の意味を示すします。故に、inactive は「活動的でない、不活発」を表し、passive 「消極的」の意味に近いと思いました。次に、reactive。re は「再度」を示しますが、日本語の「リアクション」(reaction)、つまり、「反応」の形容詞です。すなわち、reactive は「反応的」です。最後に、proactive。pro は「前へ」を示し、「前もって行動する」、私の語感では、「仕掛けていく」です。proactive が「主体的」です。(上の画像でまとめました)

 

 日常、職場(学校)で体験していることを連想することで、これらの単語が鮮明になりました。それは「朝の挨拶です」。朝の時間に学校で生徒に「おはようございます。」と私が挨拶しても、返事が返ってこない時があります。この時は、生徒は inactive 「(挨拶に)活動的でない」状態です。次に、私が挨拶して、挨拶が返って来る時は、生徒は reactive 「(挨拶に)反応的」です。最後に、クラブ員を含め、私が挨拶をするかしないうちに、挨拶をしてくる生徒がいます。その生徒は proactive 「主体的に」挨拶をしています。

 

 これらの連想から、「学び」についても同じことが言えると気づきました。すなわち、挨拶のように、授業内容に「活動的でない」学びの状態が、すなわち、inactive learning。授業内容に、教師に指示や働きかけに対してただ単に「反応して」学ぶ状態が、reactive learning。最後に、授業内容に、教師からの指示や働きかけに関係なく自ら行動して「主体的に」学ぶ状態が、proactive learning であるとの考えに至りました。最後の「主体的な学び」proactive learning こそが、「アクティブ・ラーニング」です。アクティブ・ラーニング」や「主体的な学び」を考える際には、inactive 「活動的でない」、あるいは reactive 「反応的」学びと比較することで、生徒の「主体性」がより鮮明になると思われます。

 

 これらの概念は、拙論「反転授業:アクティブ・ラーニングは「問い学ぶ」教育に道(よ)る」で触れました。