iPhone X についてクラスで語ったこと- AI/IoT社会の到来-

 先週、Apple社が iPhone X を新発売するというニュースがありました。自宅でテレビのニュースを見ている時に、それを知りました。少し意見を思いついたので、翌日にクラスの生徒に話しました。

 

 生徒もそのニュースのことを知っていたので、新機種の特徴は何かと聞くと、「顔認証で iPhone の使用を始める」と答えました。さらに、そこから何が推測できると思うか、とさらに問いました。特に意見は出なかったので、私は次の事を述べました。

 

 故Steve Jobs が初めて iPhone を発表したのが、2007年。それから10年が経ち、10を示す Xを示した iPhone Xの新機能である「顔認証」から、これから進むであろう AI/IoT(人工知能/物のインターネット化)時代の日常生活の状況を予想しました。

 

 私が時折気を付けていることが、「これからの未来がどのようになるか?」ということです。日本の高校でいち早く、反転授業を実践できたのは、それに欠かせない「解説動画」を2000年代の初期から製作していからです。それを作ろうと考えたきっかけは、2000年の流行語大賞になった「IT革命」です。拙書「反転授業が変える教育の未来」(pp.3-4)に書きましたが、デジタルによるIT(情報技術)がもたらす変化は、まさにそれは「革命」であるならば、過去の「産業革命」のように、いかに反対勢力が起ろうとも、必ずそれを乗り越えて、革命による社会変化は起こるだろうと考えました。教育もその例外ではなく、教師による一方的な解説であれば、それは動画ビデオに取って代われると思い、自らそのビデオを作り始めました。長らく「解説動画」を見せてもよい反応を得ることはできなかったのですが、反転授業を始めると言うことで、ようやく私の「解説動画」も認知されるようになりました。発案そして製作してから、認めらるようになるまで10年以上もかかりましたが、今ではリクルート社の「スタディサプリ」を始め、「解説動画」が認知され広がっています。このように、「現在 × 過去 ⇒ 未来」というのが、私の意識にあります。

 

 今回の iPhone X のニュースもそれに当てはめて考えてみます。現在が「顔認証」機能、10年前が「数字の入力」機能、さらに最近は「指紋認証」機能となっています。これらの機能の変化には、以前のブログで紹介しました「ムーアの法則」とそれに伴うアルゴリズム(計算モデル)による iPhone のデータ処理能力の向上があると推測されます。系列の大学の先生から聞いた話ですが、iPhone 6 は、1992年のスーパーコンピューターに匹敵するそうです。今回の X では、さらに年月を進めたスーパーコンピューターに匹敵することでしょう。

 

 この精度で持って新時代を象徴する AI/IoT で何が起こるかを少し考えました。IoT(物のインターネット化)とは、物に情報が入るということなので、「顔認証」する度に、iPhone X にはその所有者の顔情報が蓄積されるということになります。これから推測されることは、私が学校で同僚や生徒の顔を見て、その体調具合は無意識に判断し、様子が悪い時には「具合が悪いではないか」と推測するように、iPhone X も同様のことが起こるのではないかということです。すでに、音声入力でスマートフォンに話しかけると、AIが答えくれるように、これからはスマートフォンが「顔認証」する度に、所有者の「体調をチェック」することが考えられます。また、それに応じてすぐに薬の手配をすることが起こりうるのではないでしょうか?

 

 この考えをさらに発展させると、所有者の体調だけでなく、その人の感情の起伏なども察知し、高ぶった感情の際にはそれを和らげる音楽を流すなどの機能がでてくるでしょう。怒り、悲しみ、喜び、さらに嘘をつくなどの感情を察知する機能をスマートフォンだけなく、眼鏡などの(身につけることができる)ウェアラブルデバイスが開発され発展していくと、一体どのような社会になるでしょう?

 

 私がこのような発想をするのは、問題意識として「これから社会は急激に変化する」ことが念頭にあるからです。その変化を推進しているのが、「ムーアの法則」によるコンピューターの高速度、高処理能力の向上です。これにより、まさしく、私たちは、Al/IoT時代を生きることになります。社会が変化し、今までの考え方が通じなくなり、新たな考え方は必要する時代は、かつて Thomas Kuhn が言及した paradigm shift(パラダイムシフト)が起っていると言えるかもしれません。このような時代においては、教育においての paradigm shift を示す言葉が必要なります。なぜなら、その言葉により、新しい時代を認識し、その時代に応じた学習行動を促すからです。その言葉の一つが、「問学」であると考えています。

 


(参考文献)

Thomas Kuhn (1962). The Struture of Scientific Revolutions. University of Chicago Press

 

中西洋介、芝池宗克(2014) 『反転授業が変える教育の未来:生徒の主体性を引き出す授業への取り組み』 明石書店